漱石はどこだ

tureusa2007-03-24

映画「夢十夜 海賊版」を観てきました。これは、巨匠たちが夏目漱石の小説「夢十夜」に挑んだ映画「ユメ十夜」…に、さらに若手が挑んだ、というもの。ああ、どんな世も他人の果たしあいを高みで見物するのは楽しいものです。
で、なまいきな感想書きます。う〜ん、正直まったくわかんなかった。モチーフは何となくわかるんだけど、漱石に挑んだというふうには感じられなかった。というか、挑戦してる相手が漱石なのかユメ十夜なのかもわかんなかった。原作に真っ向勝負していかに忠実に表現するか、イマジネーション広げてパロディなりパスティーシュにしちゃうか、アプローチの仕方は各監督ごとに違うのだろうけど、何がなにやらでもう原作とは完全に切り離された別作品にしか思えない。漱石はどこだ?という感じ。そしてなにより、もう少し緩急つけて欲しかった。どれも同じトーンでかなり辛い。つまり、「夢」という薄暗く不条理な世界のイメージからあんまり飛躍できていないと言うか…十夜まとめてひとつの作品だということを考慮して作られてないと言うか、そんな雰囲気。巨匠の「ユメ十夜」がいかに上質なエンターテイメントであったかを思い知りました(挑戦というからには比較していいのだよね)。そんな中、漱石にちゃんと向き合っててかつ良いと思ったのは1、9、10夜。特に10夜は、原作をうま〜く下敷きに置きつつ、他の夢も意識した作りでリズミカルかつスピーディだった。今回のベストワン。
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